種族
海人 Doris
頭に二本のツノを持つ種族。
食の傾向が非常に多岐にわたることが最大の特徴。
◆肉食(鞘人食)
鞘人食の海人で、種の中では比較的多数のため代表して肉食と呼ばれることが多い。
元々は生きた鞘人を狩って食っていたが、人道的な観点から現在は食肉として流通する鞘人肉は死体の加工品のみ(質はよくないものの貴重品のためそこそこ高価である)で、不足分は藻食か代替食で補っている。
自切・再生能力を持ち、体内に毒を有する者もいる。
◆藻食
海藻のみを食べる海人で、こちらも種の中では比較的多数。
鞘人は食べる対象ではないので食欲を覚えないが、鞘人からは見分けがつきにくいため敬遠されがち。
◆その他
海麺(詳細は不明だが動物性の素材で作られた麺らしい)を好む者、さらに他種族のみを食べる者なども存在する。
◆共食い
肉食、藻食にとっての禁忌的存在。鞘人は食べないため、鞘人の中には共食いの海人を支持することで肉食の海人を滅ぼそうと考える者もいる。生まれた時は肉食や藻食とほぼ見分けがつかないが、ある程度成長した段階で突然共食いになることがある。
海人を常食することで特に生命力が高く、「ゆえに高等生物である」といった独自の考えも存在する。
圧倒的な力を持っているため政府も制御しきれず、現状ほぼ野放しになっている状態。
鞘人 Ascidiacea
れっきとした種族の一つだが、海人の捕食対象であったために食料として手ずから育てられたり、実験対象として解剖されるなど過酷な目に遭ってきた。
10年前までは「鞘人の完全養殖政策」が施行されていたが、当然のごとく鞘人による暴動が多発し多数の犠牲を生む事態に発展したため、完全養殖政策は撤廃された。とはいえ現在でも食糧難や新鮮な鞘人肉を求める海人によって多くの殺人事件が引き起こされている。
現在ではだいぶ境遇が改善されたものの未だに海人との溝は深く、遠く離れた地で怯えながら暮らす者も多い。
主な食事は藻食、あるいは代替食。
舞台
ドーリス街 Doris City
多くの海人たちが集う大きな街。
他種族もいちおう生活しているが、もともと「鞘人を食う者」「海藻だけを食べる者」「他種族を食べる者」と多岐にわたって捕食していた海人を現在も恐れる者は一定数おり、居住者そのものは少ない。
また、近年の「共食い」の増加にともなって街の治安は悪化の一途をたどっており、一本裏道に入ると海人の死骸が転がっていることも…
SMILING ASCIDIAN
表向きは一般の海人向けに鞘人の肉や藻食を提供しているダイナーだが、共食いの肉を提供しているため味は(一般的な客層にとっては)最悪。料理の原材料については明言こそされていないが、好んで食べにくるのは実質ほぼ共食いのみで、ほかの客はほぼ寄り付かない。
店員である鞘食たちは共食いに親族を殺されたりなど恨みを持つ「共食い殺し」であり、訪れる客を秘密裏に調査・始末している。店で提供される共食いの肉は始末された客のもの。
海老堂 kairoudou
小夜を拾った第一の恩人・片羽が営む小さな本屋。四方を格子のガラス戸で囲まれた、3階建ての不思議な造形の建物。かつては片羽とその妻が夫婦で切り盛りしておりそこそこ繁盛していたが妻が亡くなってから次第に客足が減り、人々が紙の本から離れる時代の流れもあってすっかり閑古鳥の鳴く寂れた店となっていた。
そんな折に実験場から逃げ出してきた小夜が転がりこみ、子のいなかった片羽が温かく受け入れたことから小夜にとっての第二の家となる。
また、小夜との交流を通じ、鞘食にとっても戦いの傷を癒す憩いの場となっていく。